修理について

Sitar Houseでは、シタールの様々な破損の修理やメンテナンスを行っています。
このページでは、主な破損について解説します。

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破損(故意の衝撃・劣悪管理・貰い事故などによる)

シタールを倒した・落とした・物が落ちた・水を被った・エアコン・ストーブの熱の直撃、長時間の多湿、急激な乾燥、水被り・雨漏り、隣家・隣部屋の火事、カビ、ペットの放尿などによる、過失の有無に関わらず、急激で不適切な衝撃・影響によって生じた破損。

胴体の破損(穴・ヒビ・陥没)

最も多く見られるのが、夕顔(食材・かんぴょうの原料となる括れず大型になる瓢箪類)の実の胴体は、非常にモロい素材です。「ならば丈夫な素材にすれば良かろう」という考え方は「インヴェイション至上主義」であり、「伝統的・伝統保守継承」とは相反します。

実際現地でも「アルミ胴、ファイバー(FRP)胴、木製胴などが試みられましたが、木製胴を除いて、いずれもきわめて貧相で味気ない音になってしまい、天然素材(Tumba/瓢箪)には適わないと、圧倒的多数の演奏家が結論を付けています。

しかしながら、近年の「エレクトリック(Pick-Up内蔵)やマイクに頼る演奏では、「合成胴」の遜色は十分に補われるとも言えます。しかし、世の中・文化の方向性が、このまま、「イノヴェイション至上主義」が続くとは限りません。「伝統回帰」「自然主義」に舵を切った場合、「合成胴」の楽器は嫌われるに違いありませんが、「天然胴」の楽器は、今日でさえ、「生音が素晴らしい」とは誰もが述べています。

「破損させる恐怖」本意に「本来の音・魅力」をおざなりにすることを良しとする傾向はインドでもごく一部です。

重症(修理複雑・高難度)

図のA:「破損断面が外斜め」の場合は、見ての通り外側から破片を宛てて接着すれば、強度も見栄えもかなり復旧します。しかしB:「破損断面が内斜め」の場合は、外側からの修理作業では、ぶつかり合う部分の素材を削って欠損させ、パテで埋める必要があります。完璧を期す為には、「表面版を剥がして内側から作業する」必要があり、大手術となります。
また、実際は、「AとBが混在」していることが多いのも悩みです。

特級修理

表面版を剥がして胴の内側から修理と補修(強度アップ)。
胴全体塗装をしなくても良いほど修理跡が目立たない場合は、再塗装をしない方が見栄えも 音も価値も旧態が維持されます。

中度修理

外側からの修理ですが、穴の周囲内側に「受け小片」を接着して欠片を閉じます。

並級修理

外側から小片を接着し、隙間をパテで埋める。胴全体塗装が不可欠。
このような理由から、修理の難易度(経費の高低)は、「破損の大きさ」ではなく、「破損の状態」によって大きく変化します。

軽症(修理容易)

「陥没」「破片欠損」「破片が細か過ぎる」などではなく、単に「ヒビが入っただけ」で、前図の「A:」のような形状の場合、作業も容易で修理費用は安価になり、仕上がりも上々となります。

Neck-Joint折れ

倒したり、落とした弾みで「棹と胴の接着部()Neck-Joint」が折れる状態です。
Neck-Joint内部には、「胴とも棹とも独立したジョイント材」によって接合されている場合と、「棹材から削りだしたジョイント部」いよって接合されている場合があります。前者の場合、衝撃によって生じたクラック(ヒビ)がジョイント材には及んでいないことがあって、修理がやや容易な場合があります。

後者の場合、木材の木目の性質と衝撃の相関性や、元々の素材の劣悪さ、製法技術の粗雑さなどによってジョイント部を切除し、新たに「独立ジョイント材」を製作せねばならない場合があります。

又、多くの場合は、「胴全短の木製部=はかま(写真参照)」にはクラックが及ばないものですが、稀に「はかまクラック」がある場合は、かなり難解な修理となります。

いずれにしても「Neck-Joint折れ」の場合、「表面版を外す→戻す(表面版周囲の装飾とピックガードの外しが不可欠)」で、修理難度も修理費も高くなります。

糸巻折れ

糸巻は、「何かが当たったり、当てたり」もしくは、「固い状態を無理やり回したり」で破損します。前者の場合、多くは変形してしまいます。後者の場合、多くは、「材の木目」に沿って折れます。

簡易修理

展示品・装飾品など、見た目が復旧していれば良い場合。及び、練習・演奏用で、それに耐え得る修理をする場合、破損状況が良好で修理難易度が比較的安易な場合。ほぼ接着で完了の場合。

中度修理

折れ角度によっては、図のABCのような違いがあります。

A:木材の繊維が縦・斜めの場合で、固くなっている状態を無理に回すと「ねじ折れる」結果となります。
  この場合は、単純に接着である程度の強度を持てる場合もあり、補強も硬材の木釘で十分な場合が多い
B:木材の繊維が横(通常有得ませんが)ぶつけたりで強い衝撃が一気に掛かった場合、真横に折れます。
  この場合は、切断面を斜めに切り直す場合や、クランク型に切り直すことで接着面を広げます。
C:じわじわと強い力で折った場合、複雑に折れてしまいます。破損直後(数日間)であれば接着でOK

複雑な断面が変形している場合は、「軸全体」を代えねばなりません。
この他、他の糸巻との「握り部分のデザインの統一性」を重視して、「軸全体を代え、握りを残す」方法は多くとられます。

保護ピンの欠損

糸巻先端に「牛骨のピン」の装飾があり、それが欠損する場合があります。
大きさ・形状を揃える場合(旧態未破損の糸巻の見本が必要です)とそろえず普及サイズを取り付ける場合などで工費が変わります。ピンは「デザイン性」のみならず、糸巻に加わった衝撃を受け止めて自滅する「バンパー」の役割も担っていることは、通常理解されていません。

インレイ(装飾)の欠損

糸巻・装飾保護ピンのところで前述しましたが、装飾は、一般に考えられている「美しさの装飾、楽器の品格・品質の誇示、工芸品としての価値」以外にも、ぶつけたりによる損傷から木材を守る「バンパーの役目」もになっています。シタールの装飾は、もっぱら「セルロイド」を用いますが、日本では可燃性素材の為、製造材料として流通するばかりで、市販はされておらず、インドからも航空便での輸入はほとんど無理な素材です。

そもそもシタールの装飾は、無垢のセルを張って、楽器の上で彫刻・色付をします。よって、完璧を期すには、同じ事をせねばなりません。数センチの補修でも、数千円~数万円の手間となることは必死です。それと比較して、簡易な修復は、完全には柄が揃わない似たような別のシタールの装飾を転用することですが、角などで数センチ程度の欠落では、これで十分とも思われます。いずれにしても、破損欠落に気づいたら、数ミリでも保管しておく事をお勧めします。

使用劣化(救急的)

駒とサワリ(Jawari)の調整

経年劣化(慢性的)

・棹の順反り
・棹の左反り
・Neck-Jointの破損
・フレットの磨耗
・糸巻の細り・穴の広がり

基本(品質)的欠陥からの問題

・糸巻の調整 主弦/共鳴弦
・弦・調弦法と楽器の適合性
・共鳴弦の調整
・フレットと弦高

その他

・構造的欠陥
・グレイド・アップ
・オーバー・ホール