楽器について

投稿者: sitar-house 投稿日:

シタールとは

シタールは、ビートルズのジョージ・ハリスンが弾いたことで1960年代末に世界的に有名になった、北インド古典音楽の弦楽器です。ジョージ・ハリスンと同時代や前後にも、イギリスのフォーク(トラッド)界、サイケデリック・ロック界でも、何人かのミュージシャンが弾いて60年代末に世界的なブームになりました。日本でも同様なのですが、ギター感覚では難しい楽器なので、ブームは五年ほどで終わってしまいました。それでも、その後何時の時代でも、例えばプログレシブ・ロックや、モード奏法のフリー・ジャズや、比較的近年のアンビエント音楽などで何人かが弾いていました。

元々は、北インド宮廷古典音楽の楽器でしたが、第二次世界大戦直後の1945~47年に、イギリス植民地からパキスタンと分離独立することと同時に、王政から共和制に移行し、宮廷音楽が終焉した後は、「芸術音楽」と「商業音楽(ショービジネスや映画音楽)」として生き残るしか術がありませんでした。両者の中間的な存在で、文化人の子女が教養として学ぶということもありました。

知られざるシタールの歴史

 前述の内容は、少し調べれば、様々な音楽書やネット情報で得られる話ですが、シタールの本当の歴史や、音楽史上の有様を知ることによって、その楽器の特性をより深く理解することが出来ます。それは以下のような項目です。

1)シタールは、北インド宮廷古典音楽の18世紀の大改革の後に現われた新楽器の最後にデビューした新しい楽器であった。


2)シタールの名は正しい発音は「スィタール」で、ペルシア語の「セタール」がインド訛りになったもの。

3)従って、現代のイラン古典音楽楽器「セタール」は、シタールのルーツから枝分かれした親戚であり、「イランのセタールがルーツ」は間違い。

イランのセタール

4)シタールの前駆型は、10世紀頃から北インド・西インドに修行僧の大道芸や花柳界に「世俗楽器」として現われ始めるが、古典音楽の楽器に発展(改造)されるのは、18世紀中頃のこと。

5)「世俗楽器時代のシタール」と「古典音楽楽器シタール」の最大の違いは、後者が「サワリ音を出す駒」「フレット上で弦を横に引っ張って音程を変えることが出来る上部で湾曲しているフレット」を装備したことです。これによって古典音楽用シタールは、北インド古典音楽の「装飾音」を余すことなく表現できるようになったのです。そのアイディアは、紀元前から古典音楽の弦楽器の王座を独占していた「ルードラ・ヴィーナ」から得ていますので、ルードラ・ヴィーナもシタールのルーツのひとつと言えます。

シタールの駒
シタールの弦を横に引っ張る技法「ミーンル」
(「ミーンド」と一般的に呼ばれているが、正しい発音は「ミーンル」が近い)

6)戦前の宮廷音楽の時代では、最も格上の音楽が声楽と器楽が同じ音楽だった「ドゥルパド様式」とされ、その系譜は紀元前のヒンドゥー寺院音楽にまで辿ることが出来ます。ところが、中世後期になると、イスラム宮廷の下級宴楽に、花柳界の音楽などが流入し、新しい音楽様式が生まれます。それらは以下のジャンルです。

1819世紀

●古典声楽「カヤール」
 花柳界歌曲が古典音楽の理論の要素をより深めたもの。
 伴奏旋律楽器は、弓奏楽器「サーランギー」に限られた。

●古典器楽「ガット」
 シタールに先んじて気化アフガン人(傭兵として多く流入していた)の古典音楽
 弦楽器ルバーブをインド音楽用に改造した「サロード」で演奏された。

●古典器楽「タントラ・バージ」
 サロードと初期のシタールは、「器楽独自のスタイル」を誇りとして
 「タントラ(弦楽器)・バージ(スタイル)」と呼ばれ「声楽カヤール」と対峙し
 一線を画していた。音楽様式と技法はドゥルパドに準じた。

タントラ・バージの最後の巨匠だった、Ustad Ilyas Khan師

20世紀(戦後)

●古典声楽「トゥムリ」
 花柳界歌曲が古典音楽として認められた。同系に「ダードラ、カジャリー、ムジラ、ホリー」などがある。

●古典器楽「ガヤキ・アング」
 シタールが、カヤールとトゥムリのスタイルと技法(主にムルキ=こぶし)を真似、古典音楽の素養が少ない一般聴衆に大人気となった。これは今日現代のシタールの構造を大きく変えました。

20世紀後半(1970年代以降)

●民謡楽器・地方楽器の古典音楽(楽壇)への侵入
 カヤールの伴奏に、西洋渡来の鍵盤楽器「ハルモニヤム」が登壇し台頭。
 カシミール地方の神秘主義音楽の打弦楽器「サントゥール」の登壇
 民謡の横笛(バンスリ)を大きくして古典音楽に登壇
 軍楽と儀礼音楽のオーボエ「シャーナイ」が古典音楽に登壇

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