シタールのクオリティー

投稿者: sitar-house 投稿日:

インド楽器とその製作技術は、世界的に見て少し換わったところがあります。それは、ごく一部の名匠を除いて、製作技術と材料に、殆ど差がないことです。にも拘らず、後記のようなグレードが生じるのは何故か?それは各点の名匠が、殆どを製作するものを最高級として、それ以下は、要所要所を「後継者」「修行中の弟子」「見習い」「小僧さん(名匠の孫や従業員の子など)」任せてしまうことで「品質・手間賃・価格を下げる」という手法を基本としているからです。

特に、糸巻製作に於ける、担当者のレベルの差に著しくこの特徴が現われます。
ヴァイオリンやリュートなどの西洋の木製ペグの製作には、「テーパー(微妙な角度の)がついた穴」と「テーパーがついた糸巻(先が次第に細い)」が完全に一致する「リーマー(テーパーのある穴を開ける道具)」「シェイパー(テーパーのついた円材=糸巻を削る道具)」をセットで使います。

しかし、インドでは今世紀になってもこれらの道具が完全には普及しておらず、「穴は、棹の手前と先でテーパーの無い異なる直径の穴を開けるだけ」で、「糸巻は、人間の勘で真円に近づけ、勘でテーパーをつける」ので、熟練度でその精度は極端に異なるのです。にも拘らず、伝統的に糸巻は、見習いに作らせることが多いのです。これは基本的な技術や材による価格差が狭いので、品質を落として価格を下げるしかない、という、日本の伝統工芸の感覚からは考えられない「非本物志向」が基本にあるからです。

しかし20世紀の末からは、良材が枯渇し、普通材や粗悪材を用いて、機械化が進んでラッカー仕上げだけが見事になって来ていて、見栄えと本質には、昔からは考えられないほどの差異も出ています。ところが、現地演奏は、急速にマイクに頼るようになったので、本来の音質と響きの良さは、殆ど問われなくなっていることも事実です。

AAA級(最高級・巨匠用・受注製作)

名工・名匠が最高級素材で時間を掛けて丹念に製作。現在は希少。
1980年代迄のHiren-Roy、Kanailal、Makhanlal、Hemen(いずれも先代)
新品は鳴らないが、正しく弾くと年々音に深みが増し、音量も増す。

自然素材のTumbaですが、厚さ・硬さ・左右対称度の選択が最高級
余計な(無駄・無益な)パテ塗り・厚塗装をしていない。
表面板Seasonal(数年自然乾燥させた)な良材、適度な厚さ。
Seasonal(数年自然乾燥させた)な良材、適度な厚さ。
主弦糸巻熟練者が製作、正確な円、高級材、形状・装飾は二の次
共鳴弦糸巻熟練者が製作、正確な円、高級材、形状・装飾は二の次
適正・適度な間隔(12~13本)、指で正確に調弦出来る。
フレット適度な太さ(5mm)、適度な高さ、非対称に湾曲、19fも多い。
弦高適度な高さ(11~12mm)
主駒鹿角製。ジャワリの効き・強さは特注
共鳴弦駒鹿角製。ジャワリの効き・強さは特注(やや控えめ)
緒止鹿角・真鍮製(ほぼ中心線上にある)
上駒適度な厚さ、Tar-Danには切れ道がある。
共鳴弦穴精巧で、高くなく、弦は決して重ならない。
装飾(インレイ/縁取り)精巧で細かく見事。
仕上げ塗装手塗りで精巧、厚くない。

AA級(高級・プロ用・受注製作)

名工が高級素材で時間を掛けて丁寧に製作。現在は希少。
1980年代迄のRikhi-Ram、Radha-Krishna、Nitai(いずれも先代)
新品はやや鳴らないが、正しく弾くと年々音に深みがやや増し、音量もやや増す。

厚さ・硬さ・左右対称度の選択が高級
余計な(無駄・無益な)パテ塗り・厚塗装が少ない。
表面板準Seasonal(数年自然乾燥させた)な良材、適度な厚さ。
準Seasonal(数年自然乾燥させた)な良材、適度な厚さ。
主弦糸巻熟練者が製作、正確な円、普通良材、形状・装飾は二の次
共鳴弦糸巻熟練者が製作、正確な円、普通良材、形状・装飾は二の次
適正・適度な間隔(12~13本)、指でほぼ正確に調弦出来る。
フレット適度な太さ(5mm)、適度な高さ、対称湾曲も多い、ほとんど20f。
弦高11~12mmよりやや高め
主駒鹿角/黒檀製。ジャワリの効き・強さは特注
共鳴弦駒鹿角/黒檀製。ジャワリの効き・強さは特注(比較的控えめ)
緒止真鍮製(中心線より左が多い)
上駒適度な厚さ、Tar-Danには切れ道がある。
共鳴弦穴精巧で、高くなく、弦はほぼ重ならない。
装飾(インレイ/縁取り)精巧で細かく見事。
仕上げ塗装ほぼ手塗りで、ほぼ精巧、やや厚い。

A級(高級・プロ用・既製品)

名店で分業で製作。現在は希少気味。
1980年代迄のRikhi-Ram、Radha-Krishna、Nitai、Naskar(いずれも先代)
新品から良く鳴るが、正しく弾いても年々音質、音量が成長しない。

厚さ・硬さ・左右対称度の選択が良品
余計な(無駄・無益な)パテ塗り・厚塗装が少なめ。
表面板Seasonal(数年自然乾燥させた)な準良材、しばしば厚い。
Seasonal(数年自然乾燥させた)な準良材、しばしば厚い。
主弦糸巻準熟練者が製作、やや不正確な円、普通材、形状・装飾で誤魔化しがち
共鳴弦糸巻準熟練者が製作、やや不正確な円、普通材、形状・装飾で誤魔化しがち
やや不適正な間隔(13本)、指での調弦がやや困難。
フレット適度な太さ(5mm)、高さが不揃い、対称湾曲が多い、ほとんど20f。
弦高11~12mmよりかなり高め(15mm以上)
主駒鹿角/黒檀製。ジャワリの効き・強さはデフォルト
共鳴弦駒鹿角/黒檀製。ジャワリの効き・強さはデフォルト(ややキツい)
緒止真鍮製(中心線より左が多い)
上駒無用に厚い、Tar-Danには切れ道がある。
共鳴弦穴やや雑、高くなく、弦はしばしば重なる。
装飾(インレイ/縁取り)ほぼ精巧で細かく見事。
仕上げ塗装ほぼ手塗りで、ほぼ精巧、大分厚い。

B級(中級・生徒用・既製品)

名店で分業で製作。現在のRadha-Krishna、Naskar、各地の良店(ノーブランド)
新品から良く鳴るが、どう弾いても音質、音量は年々劣化する。
本物の演奏家が弾くと良い音が出ない。生徒の方がきれいに聞こえる。

厚さ・硬さ・左右対称度の選択が並級
余計な(無駄・無益な)パテ塗り・厚塗装が多い。
表面板Seasonal(数年自然乾燥させた)でない並材、厚い。
Seasonal(数年自然乾燥させた)でない並材、厚い。
「節」がややある。そこでクラックが生じる場合もある。
主弦糸巻修行中の者が製作、不正確な円、並材、形状・装飾で誤魔化す。
共鳴弦糸巻修行中の者が製作、不正確な円、並材、形状・装飾で誤魔化す。
不適正な間隔(13本)、指での調弦がやや困難。
フレット適度な太さ(5mm)、高さが不揃い、ほとんど対称湾曲、ほとんど20f。
弦高かなり高め(15mm以上)
主駒牛骨製。ジャワリの効き・強さはデフォルト
共鳴弦駒牛骨製。ジャワリの効き・強さはデフォルト、あまり共鳴しない
緒止真鍮製(中心線より左が多い)
上駒無用に厚い、Tar-Danには切れ道がある。
共鳴弦穴雑、しばしば高い、弦はよく重なる。
装飾(インレイ/縁取り)やや雑で大雑把
仕上げ塗装機械塗り、大分厚い。

C級(中級・お土産品・既製品)

輸出大店で分業で製作。現在のKartar(Delhi)、Paloma(Mumbai)、各地の各店(ノーブランド)
及び、楽器匠ではない民芸品製作者の作品。
熟練者(名演奏家)が弾くと汚い音が鳴る。素人が弾くとどうにか聴ける音になる。

厚さ・硬さ・左右対称度の選択が劣悪
余計な(無駄・無益な)パテ塗り・厚塗装が顕著。
表面板一般材、厚い。
一般財、厚い。「節」が多く、クラックが生じ易い
主弦糸巻修行中の者が製作、劣悪な円、劣悪材、形状・装飾で誤魔化す。
共鳴弦糸巻修行中の者が製作、劣悪な円、劣悪材、形状・装飾で誤魔化す。
不適正な間隔(13本)、指での調弦がやや困難。
フレット適度な太さ(5mm)、高さが不揃い、ほとんど対称湾曲、19fが多い。
弦高かなり高め(15mm以上)
主駒牛骨製。ジャワリの効き・強さはデフォルト
共鳴弦駒牛骨製。ジャワリの効き・強さはデフォルト(殆ど共鳴しない)
緒止牛骨3ピン式
上駒薄い、Tar-Danには切れ道が無い。
共鳴弦穴かなり雑、しばしば高い、弦はかなり重なる。
装飾(インレイ/縁取り)ひどく雑で大雑把
仕上げ塗装雑な手塗りで、薄い。
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